橋本百合香(はしもとゆりか)さんのインタビュー



-京都からの出品ですが、きっかけは?
上本佳奈さんと同級生で、ツイッターで拡散しているのを見て、この展示を知ったんです。
広島で展示したことがなかったので、今回参加したいなと思いエントリーしました。

-コロナの影響はどうですか。
そうですね、大変でした。
授業や、絵を描くこともほとんど家でやることになってしまって。
3年生のときに模写クラスに所属していたのですが、 コロナの影響で大学に入れなくなってしまい、
画面越しに先生からアドバイスを頂いたり合評等もzoomで行っていました。
色見や質感も画像だと伝わりづらいし、本物を見てほしいけどみてもらえないなど大変でした。

-よかったことも何かありましたか?
嵐山の福田美術館の美人画の展示を見に行ったのですが、 普段人が多いのにガラガラで、
一つの空間に2,3人しかいなくて、 その時はゆったり鑑賞することができてよかったです(笑)

-作品の画材のチップボール紙ってどんなものですか?
灰色の固めの厚紙です。比較的安価で手に入れることができるものです。
それを木のパネルに貼り、石膏地という処理をします。
石膏地というのは、西洋で古くから使われていた技法です。
私は日本画コースなんですが、大学では西洋の技術を学ぶことができて、 2年のときのさまざまな支持体に描く授業で使ってから気に入っています。

-どんなところが気に入ってるのでしょう?
日本画というとイメージ的に和紙や絹本に描くのがオーソドックスですが、
絵具を塗ったあとに、色を取るという行動は難しいと思います。
特に模写作品を制作した時、絹本に描くことが多かったのですが一発勝負が多く墨が染みこんで後戻りできないなど神経を使う場面が多かったです。
石膏地の上に絵具を塗ると、そのあと紙やすりで削ったり、 カッターで削ったりすることができるんです。
それでちょっとづつ、削って描き起こしてという作業をくりかえすと、
残像みたいなぼんやりした感じのマチエールができます。
そのマチエールが好みだったので、今はそのスタイルで描いています。
ちょっとかたい時は、湿らして削ったりもします。
「春の見張り番」はサンドペーパーで細かくやすりがけをしたり、カッターで大胆に削り春から夏にかけて僅かに変化していく光を表現しています。

-作品のテーマはありますか?
自分の記憶に残っている瞬間…その時に感じた温度や空気とか気配など見えない何かが感じられるような作品をつくっていきたいと思っています。
「たからもの」では、楓そのものを描くだけでなく、 そのとき感じたあたたかさを描きたいと思って、
「はにかみ」では、逞しく育つ水仙の土っぽさが感じられるような作品にしたいと思って描きました。

-今後どんなふうに制作していきたいですか?
作家活動をしていきたいと思っていて、まずは大学院に進学しようと思っています。
筆をおいた瞬間が完成じゃなくて、それを飾った時点で作品が完成すると 感じていて、
飾る空間を大事に思うようになりました。
見る人に空間と作品がマッチしているなとか、いいなと思ってもらえるような 作品づくりや活動をしていきたいと思っています。

-オークションに来てくださった方にメッセージをお願いします。
日本画は、昔から、床の間などに飾られていて、 障子から入る自然の光や、ろうそくの光で作品が照らされていました。
自然光が入るところに飾ってもらえると絵の具や顔料のきらめきがきれいにみえ、下地の色も爽やかに見えると思います。

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作品のことをもっとお聞きしたかったのですが、わかってない私たちに石膏地の説明を 丁寧にしてくださって、時間切れになってしまいました(汗)
早く本物の作品を拝見したいです。ありがとうございました。(2021/7/17)