サボテンの絵をたくさん描いていらっしゃる吉村さん。
まずは、サボテンのお話から。
-サボテンの絵は、これまで何枚くらい描かれてるんですか?
これまで、10枚以上は描いています。
サボテンは自分のなかの心の支えとして描きたいな、と思っていて、
制作に疲れた時とかでも、一番モチベーションが上がるのがサボテンです。
乾燥した過酷な環境で、時間をかけて力を蓄えて、何年かに一度、一瞬だけ花を咲かせるという過程がとても好きです。
生命の一瞬のきらめきや美しさを表しているようで、人の人生と重なります。
-サボテンはお家にたくさんあるんですか?
はい、あります。母も好きなのでたくさんあります。
個展のときにいただいたものも(笑)。
-今回の作品「力咲く(ちからざく)」のサボテンの名前は?
「フェロカクタス」という種類です。
日本語でいうと「黄彩玉」というサボテンです。
植物公園にあったものをスケッチして描きました。
-植物公園にはよく行かれるんですか?
はい、よく行きます。
今まで、描いた植物は、ほとんど植物公園で取材をしたものですね。
-緊急事態宣言中は植物公園も閉まってましたが…
ずっと閉まっていたので、描きに行きたいなと思って、すこしフラストレーションを抱えていました(笑)
今週末あたり、そろそろ行こうかなと、計画しています。
-他に、コロナ禍で大変だったことはありますか?
修士課程の卒業制作にとりかかっていたのですが、不安の中で制作をしていました。
岡山県立美術館の作品の古典模写をしていたので、専門的な先生方の意見を常に聞くとことが必要だったのですが、
先生方とお話する機会も減ってしまって。
また、模写作品の原本調査でもコロナの影響で日程調整や人数制限などがあり、大変でした。
でも、大変だから逆に細かくスケジュールを組み立てて、それに沿って制作できたところもあり、
時間がないからこそ、今できることをとにかくどんどんやっていきました。
不安でしたけど、それも自分の成長を促す一つの課題ととらえて、それをどう乗り越えるかというポジティブな気持ちで過ごしていました。
-今回出品されている作品「力咲く(ちからざく)」について
サボテンを画面いっぱいに書いて、花を銅箔を使ってきらきらとした感じを表現しています。
銅箔は土色で、今回のサボテンのイメージにあっていると感じたので使っています。
とげの部分は、クロイゾネコッパーというちょっと特徴のある画材を使っています。
普通の岩絵の具と違って、ラメ感があって、キラキラするんです。
とげの表情を描く時は、箔より絵の具っぽい質感のほうがあっていると思って、この画材を使うことが多いです。
-将来はこれからどうしたいと考えていますか?
直近では、来年11月に第2回目の個展を開く予定です。
いままでやったことのないような大きい作品を計画しています。
これから制作していくのですが、自分の中の制作に対する考えや思いを皆さんに伝えていきたいと思っています。
特に植物等の様な、自然から溢れるエネルギーを描いていきたいです。
自然は時に私達の生活を脅かす残酷な一面を持ってます。
ですがその反面、自然の美しさが傷ついた心を癒してくれる事もあります。
人間には遠く及ばない存在ですが、その大きな力からは「生きなきゃ」という意思を私に抱かせます。
そういったことをサボテンから強く感じるので、これからも伝えていきたいなと思っています。
-石本正日本画大賞展や、清風会などで、入賞されていますが、サボテンを描いた作品を出品されたのでしょうか。
はい、賞をいただいたのは全部サボテンを描いたものです。
一番自分の思いを乗せやすいモチーフなので、その思いが伝わるのかもしれません。
-博士課程の3年間、どのようなことを研究されるのでしょうか。
一つにテーマを決めて制作する人や、いろいろな研究をしたりする人もいますが、私は、細かい技法などにこだわらずに、心からやりたい表現を見つけることが目標です。
その目標の答えというわけではないけど、来年の個展をそのきっかけにしたいと思っていて、個展に向けて作品を制作し、やりたいことにつなげていきたいと思っています。
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吉村さんのお話を聞いていると、サボテンの中に宇宙があるように感じてしまいました。
これからの自分の表現を模索中とのことですので、とても楽しみです。(2021/7/13)